永晃
永晃

 



糸は基本的に紡績糸(短繊維:Spun yarn)、長繊維糸(Multi filament yarn)、単繊維(Mono filament yarn)がある。
天然繊維は羊毛、綿を原料として紡績糸がつくられるので長繊維はできない。これに対して主な化学繊維は上記いずれもの形態について種々の太さの糸を製造することができる。濾布は、それぞれ糸の特性を活かして単独繊維、あるいは混織、混撚などとして多様な製品がつくられている。


○紡績糸(スパン糸)Spun yarn

綿糸は、綿花より採取した繊維を紡いで糸にするが、化学繊維ではそれぞれの綿(ワタ)からつくったトウ(tow)を引伸ばしながら切断して紡績糸をつくる。
この場合1本1本の繊維(filament)は25〜45mm位にカットされている。紡績糸でつくられた濾布は構成繊維を細くし、かつ短繊維の“からみ”を与えることによって充?率の高い繊維につくられるので、微粒子の捕集に適する。特に微粒子スラリーの清澄濾過には紡績糸を使った緻密な織物でなければならない。反面濾布の表面は繊維の毛羽が出るのでケーク剥離性は低下する。


○長繊維糸(マルチフィラメント糸)Multi filament yarn

これは熱や溶剤によって溶解した原料を口金より紡出したエンドレス糸を集束したもので一般に3〜10デニールの糸を数十本束ねたものを1本の糸(multi filament)とする。
濾布は、同糸を1〜数本より合して構成する。糸のトータル太さより回数、織密度、織り組織によって濾布空間率は大幅に変わる。同時に強度も上記の構成によって変化するがマルチフィラメント糸は、スパン糸やモノフィラメント糸に比べ強い糸が得られるので、濾布としても強靭なものをつくることができる。濾布表面はなめらかでケーク剥離性にすぐれている。


○単繊維糸(モノフィラメント糸)Mono filament yarn

これは、multi(多数)に対するmono(単)でテグス状の糸をさす。
一般には、0.1mmφ位の太さから濾布として利用される。布の空間率は、糸の太さと織り密度によってきまる。この場合スパン糸や、マルチフィラメント糸と異なり微細繊維の集合体ではないため個々の空間の大きさを算出することができる。糸の形態上、緻密な濾布を得ることはできないため清澄濾過には使用しにくい。しかし、濾過速度は大きくケークの剥離性、洗浄による復元性は大きいため、目詰まり耐性はすぐれる。廃水処理や都市下水の汚泥処理のように凝集剤の使用を前提としたSS(suspended solid)除去の目的には最も多く用いられる。引張強さは大きいが摩擦強度や鋭角に対する衝撃荷重には弱いため注意しなければならない。糸の伸び特性は小さく使用時伸びの少ない製品が得られる。


糸の形態による濾過性能    ◎=良い  ○=普通  △=良くない
濾過量 清澄度 ケーク剥離 目詰まり 洗浄回復
モノフィラメント糸
マルチフィラメント糸
ステーブル糸